熱せん妄

大津の町の小児科医

2011年05月10日 17:29


高熱時に、子供さんがよくわからない行動をとって不安になられたことはありませんか?
私も、子供が虹が見えるとか、蟻さんがあるいているとか、妙に怖がるなどの異常行動を見たことは多々あります。

このような発熱時の異常な行動は、『熱せん妄[もう]』と呼ばれています。

このせん妄は、軽度又は中等度の意識混濁に、錯視、幻視、幻聴や異常行動が加わり、特徴ある臨床症状を呈する意識変容の一型です。熱が高くなると、大脳の温度が上昇します、大脳では、脳細胞から様々な化学物質をどんどん放出させる結果、いろいろな複雑な精神神経症状が出現して来ます。

この熱性せん妄の場合、今の自分のおかれている状況を理解する機能が傷害されるために、外界は夢幻様に変わり錯覚が起こり、実在するものと区別ができなくなります。

熱せん妄の場合は、高熱で意識が混濁するとともに、幻覚や錯乱が現れ、不安・苦悶・精神運動の興奮がみられるせん妄の一種で、高熱と代謝障害による脳の機能障害と病的な刺激症状と考えられています。

一方『脳波』について。熱せん妄の時は、脳波は軽度に徐波化して、脳の興奮を表す速波が混入する事があります。これは『レム睡眠』の時と似た脳波パターンで、急速眼球運動を伴います。しかし『レム睡眠』と違うところは、筋電図の消失を伴わない事です。ですので筋肉の脱力がないので、『レム睡眠中の夢の場合』と異なり幻覚や妄想に従って体が動いてしまうために、これが異常行動となります。

初めて熱とともにこの様な症状が観察されたときは、『脳炎』等でもこの様な症状が表れられる事があるので、速めに医療機関を受診してください。

治療方法は、いつもの通りに解熱剤を使用して、頭や腋下を冷やしてあげて、騒いでいる時には、軽くひざに抱いて声をかけてあげて、不安を取ってあげましょう。

基本的には、数分から数時間以内に症状は収まります。
それ以上持続するような意識障害や異常行動、または、その際にひきつけなどを起こす場合は、脳に障害を起こしている可能性が高くなりますので、速やかに受診したほうがいいと思います。



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